仏教学の電子化の現状と問題点
作者:佛教大学文学部教授 小野田 俊蔵
出版社:

小野田 俊蔵

仏教学電子化現状問題点

このエッセイは2001年5月開催された第17回韓日国際仏教文化学術会議(韓国圓光大学校)ける発表要旨である

佛教大学文学部教授  小野田 俊蔵 

1.       論文データベース

2.       電子仏典

3.       学問上の倫理と問題点

1. 論文データベース

「インド学仏教学論文データベース」

日本で公表された仏教学関係の論文を集めた論文データベースが 日本印度学仏教学会データベースセンター JAIBS Database Center  http://www.inbuds.net/ から公開されている。検索には相場徹氏の「印仏検」 http://www.vacia.is.tohoku.ac.jp/cgi-bin/ibsis?key が便利である。

オーストラリア国立大学のResearch School of Pacific   and Asian Studies がホストをしている「Asian Studies WWW Virtual Library」 http://coombs.anu.edu.au/WWWVLPages/WhatsNewWWW/regasia.html や台湾大學佛學研究中心の「Digital Buddhist Library and   Museum」 http://ccbs.ntu.edu.tw/   http://sino-sv3.sino.uni-heidelberg.de/e-CBS.htm  からも多くの書誌情報が得られる。

2. 電子仏典

漢字仏典

(大正新脩大蔵経)

周知、大正蔵全体電子化については、二種類のプロジェクトが大藏出版許可でデータ交換作業協力等をしながら進行している(補注a)

日本印度学仏教学会SAT(大正新脩大蔵経テキストデータベース)」 http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~sat/ でありもうつは中華電子佛典協會によるCBETA    http://ccbs.ntu.edu.tw/cbeta/ である。外字処理法文字コード   (1) などでいはあるものの、仕事としては主旨のものとえる

CBETA 大正蔵第一巻から55までと8556電子化目標としているがSAT 56から84までの日本撰述部電子化する予定

尚、両者にアクセスするには、師茂樹氏の「Index of Electronic Buddhist   Texts 」 http://www.ya.sakura.ne.jp/~moro/ebt_index/index.html が便利である。

(高麗大蔵経)

電子テキスト版「高麗大蔵経」1996試作的   CD-ROM 公開されたしかし異体字とみなして外字フォントで何十字にも区別してしまったため、問題指摘されていたその問題点解決すべく高麗大蔵経研究所、三万数千字異体字った、大幅統合した標準漢字版との二種改訂している。(2 しい、東国大学校情報産業大学コンピュータ工学部のスタッフの協力UnicodeUCS-2をベースにしつつ異体字情報さらにWindows   専用のブラウザで閲覧検索可能にして1999 EBTI(「Proceedings」 http://pnclink.org/events-report/1999/Proceedings/ )発表された

(聖語蔵)

大正新脩大蔵経校訂本つであった正倉院聖語蔵、画像版として電子化されている。「宮内庁正倉院事務所所蔵聖語蔵経巻」。編集宮内庁正倉院事務所、監修高崎直道、築島裕、皆川完一、発行発売丸善、第1唐経篇(243巻)CD-ROM   2220005刊行された

このにも、中國數字図書館  http://www.d-library.com.cn/ 、中華大藏經画像データベースが存在する

個別レヴェルでは「瑜伽行思想研究会」 http://www.edu.nagasaki-u.ac.jp/private/yugagyo/ の漢訳データベースに『瑜伽師地論』『阿毘達磨大毘婆沙論』のデータがある。

また、『大阿弥陀経』『無量清浄平等覚経』『大宝積経無量寿如来会』『大乗無量寿荘厳経』に関しては、佛教大学の安達俊英氏ホームページ「報恩蔵」 http://www.bukkyo-u.ac.jp/mmc01/adachi/index.html からダウンロード出来る。

後述するように「天台電子仏典CD2には『妙法蓮華経』等まれている

西蔵語仏典

チベット語仏典の電子データ化はACIP (Asian Classics Input   Project)  http://www.asianclassics.org/ の努力で進められてきた。公開配付されている CD-ROMはすでに Release IV となっている。オンライン上の公開は「Asian Classics Input Project」 http://www.asianclassics.org/download/texts.html で行なわれており、大蔵経に含まれないチベット撰述の蔵外文献もある。

画像データとしては、高野山大学所蔵のデルゲ版のカンギュル(経部)とテンギュル(論疏部)が、Windows 上で当該の経論典の画像ファイルを引き出せるシステムと共に、CD-ROM 53 枚で発売されている。(高野山大学附属高野山図書館/小林写真工業「デルゲ版西蔵大蔵経 Alchemy Search」)

また最近、ジーンスミス(Gene Smith) 氏が中心となってPDFを使った画像データ「Tibetan Buddhist Resource   Centre CD Sampler #1」が同センター  http://www.tbrc.org/ から配付された。、多くの西蔵語仏典所蔵する大谷大学東北大学でもチベット語仏典電子化計画んでいると

膨大な蔵外文献の検索に大変便利なデータベースが完成し公開されている。東洋文庫福田洋一氏によるPL480 マイクロフィッシュチベット語文献オンライン検索」 http://www.toyo-bunko.or.jp/Tibetan/PL480Query.html である。東洋文庫からはこれとはツォンカパTsong kha pa)全書」トゥカンThu'u   bkwang)宗義書」等科段検索できるThe Toyo Bunko   Multilingual Database CD(近々、ミパムMi 'pham)やロウォケンチェンGlo bo mkhan chen)作品Release   II提供されると)公刊されているその一部はオンライン上「Tibetan Texts Database」 http://www.toyo-bunko.or.jp/Tibetan/tibetan_resouces/index.html でも公開されている

梵語仏典

Sanskrit Buddhist Text Input   Project

米国カリフォルニア大学のバークレー校「佛學研究中心 Berkeley Buddhist Research   Center」のランカスターLancaster 教授が中心となっているプロジェクトで現在進行中。すでにデータ化された典籍のリストは同センターの http://ishi.lib.berkeley.edu/buddhist/bbrc/sanskrit_input.html にある。

また、この分野では韓国の李鐘徹氏によるthe SDICTP Project (The   Sanskrit Dictionary and Indian Classics Translation Project)がすでに多くの典籍を入力済みで、李鐘徹氏によるそのデータは カリフォルニアのランカスター教授に渡され、近い将来に CD-ROM 化される予定と聞く。1999年の電子仏典利用に関する専門学会EBTI (Electronic Buddhist   Text Initiative)  http://www.iijnet.or.jp/iriz/irizhtml/ebti/ebtie.htm で発表された李鐘徹氏(3) 自身によるプロジェクトの概要はネット上 http://pnclink.org/events-report/1999/Proceedings/lee-jc.pdf で公開されている。

その他の種々の入力プロジェクトを思い付くまま列記してみると、 Dharmakirti E-text」 http://www.logos.tsukuba.ac.jp/~nagasaki/dharmakirti/e-text.html (筑波大学小野基氏によるダルマキールティの電子テキスト)「Buddhist Sanskrit(4)   http://titus.uni-frankfurt.de/texte/texte2.htm#busktAbhisamayalamkara of   Maitreyanathaya(5)  http://online.anu.edu.au/asianstudies/ahcen/coseru/abhisamaya.htmlThe Data of the   Abhisamacarika-Dharma(6)  http://www.linkclub.or.jp/~s-koshin/AsDhIndE.htm (『大正大学綜合佛教研究所年報』に発表されたものをそのまま PDF にしたもので、検索等が可能)。また、仏典以外のものも含まれるが大谷探検隊が持ち帰った中央アジアの古写本を画像で提供する「龍谷大学古典籍情報システム」 http://www433.elec.ryukoku.ac.jp/Komon/index.html がある。

巴利語仏典 (7) 

BUDSIR for WINDOWS and   BUDSIR in Thai Translation Version (Buddhist Scriptures Information Retrieval

タイのバンコクにあるマヒドル大学で作られたCDで一般にはマヒドル版と呼ばれるものである。タイ王室版呼称されるシャム使った三蔵45とマハーチュラロンコン中心にしたアッタカター   55まれている

The Chattha Sangayana   Tripitaka CD ROM

Vipassana Research Institute http://www.tipitaka.org/ が出しているCD。最新のものはVersion(3.0)。ビルマ(ミャンマー)第六結集版を底本にして作成されたもの。

「ダンマカーヤ版CD」(Pali TextVersion 2.0[仮名]

Dhammakaya Foundation (タイ)が出しているCDPTS版をCD-ROM化したもので現在サンプル版がリリース中である。Visuddimagga/Samantapasadika/   Jataka atthakatha/ Milinda-panha 等も入力されており、画面上の各単語からPTSの辞書が検索できるという。

禅籍

「花園大学国際禅学研究所(IRIZ)電子テキスト」

電子テキストを昔から扱ってきた同研究所 http://www.iijnet.or.jp/iriz/ は「ZenBaseCD1」で有名となったが、その後もデータは蓄積されそれらは公開されている。底本校正する注記もあり利用する研究者からは信頼があつい外字は台湾の CNS コードを使った方式。

「禅文化研究所(禅学基本データベース[Z.D.B.])」

禅文化研究所  http://www.zenbunka.or.jp/10index/zdb_home.htm が発行した「基本典籍叢刊」や「善本覆刻叢書」を底本として電子テキストが公開されている。外字表記方式SAT方式っている

その他禅籍としては以下の諸典がデータ化されている。『正法眼藏』 http://www.shomonji.or.jp/zazen/genzoug.htm『正法眼藏隨聞記』 http://www.bekkoame.ne.jp/i/media/library1/zuimon.html『喫茶養生記』(栄西) http://perso.wanadoo.fr/ep.japon/kissor.htm

浄土宗浄土真宗

「デジタル法然上人全集」(CD-ROM)

浄土宗教学院から1999年に刊行された。『選択本願念仏集』及教書廬山寺本延応版往生院本からの画像データとテキスト入力されたデータとを相互検索対照出来るようにしたものカラーで画像入力された朱点入りの写本の情報は貴重である。オンライン計画現在進められている

法然上人御法語しては、「古朴堂」されるホームページに私家版のデータ  http://www1.plala.or.jp/kobokudo/hou/q_mokuji.html  があるが、使用文献精度については確認されていない

「釈浄土群疑論」(CD-ROM)

村上真瑞氏によって入力されたテキストファイル及び寛永版元徳版等の画像ファイルを含む

浄土真宗関係では、「浄土真宗聖典 七祖篇(註釈版)」寺子屋ネット(蓮浄寺中島正思氏) http://www.terakoya.com/index.html 公開されているまた電子ブックによる「浄土真宗聖典註釈版」(『教行信証』などの親鸞聖人著作類、蓮如上人『御文章』『歎異抄』などを本願寺出版社から出版されたのは1995年であるが、電子ブック専用のリーダーが必要互換性しい

天台宗日蓮宗関係

「天台電子佛典CD2」[CD1内包]

天台宗典籍編纂所  http://www.biwa.ne.jp/~namu007/index.htm  から刊行された中国天台初期文献(陳唐)81書目のデータ。『妙法蓮華経』『涅槃経』『金光明経』『梵網経』等

「立正日蓮データベース

日蓮上人遺文鎌倉版画像ファイルにめたCD-ROM。日蓮上人御遺文辞典収録されている(8) 

3. 学問上倫理問題点

書誌(論文)情報のデータベースや画像データによる写本復刻、従来行なわれて研究技法延長線上位置付けることが可能であるが、近年進められて電子仏典論文本体のインターネットでの公開にはそれとは利点欠点見受けられる

ずデータ加工途上での精度問題である。画像データとは入力完全機械的なえる現状ではないので、誤記存在する。入力効率化人件費問題最近ではよく研究者話題になる。校正作業による方法複数入力機械的わせる方法一般られるがそれでも完璧というにはいかないのである。無論、かつての刊本でも誤字存在しないわけではないいにしえのには、書写生による書写仏典がりをまた正確書写するそのこと自体「功徳」でもあったインターネットのデータからコピーして印刷したり複写したりする行為仏典書写「功徳」にあたるのかどうかはからないが、電子仏典える問題、小さな誤字でもそのりが気付かれないままがっていく格段くなるというであるこのような想像したくないが、故意経論典「手えられる」事可能性としてはあるカルト集団によるデータの破壊ざんあるいは「新たな偽経創作」さないための対策必要であろう。公開された校正作業なわれる場合意図こそうものの類似状況。更新情報徹底されないにはそれを二次的利用した研究重大影響えかねない。印刷媒体とはってインターネット提供されるデータは一日幾度となく更新することが出来るのである(9) 

また研究者作業効率がるのは歓迎される事態ではあるが、書誌情報がインターネット簡単るという、逆にリファレンスが実際には参照されずに論文上われても容易には見抜けないという可能性としてまた論文本体しても電子データされた原稿完成論文から無断引用してきた文章加工した場合にそれがどの程度オリジナルであるのかは簡単には判断出来ないであろう(10) アカデミズムが内部崩壊する可能性を十分に含むのである。倫理確立する必要もあろうし、反則行為発見するためのだても開発する必要があろうその技術研究をも可能にするつまり歴史上著名学僧過去のどの論書参照引用したのかあるいは孫引きしたのかあるいは、同著者による複数著書著述順序推考をたどる研究などはデータの分析上記方法応用してなえば、今までよりも容易にそれが可能となる。複数文献用語計量的分析して形容詞等使われからその著者訳者特定するあるいは推定をする研究進展するであろう

鈴木隆泰氏(東京大学東洋文化研究所附属東洋学研究情報センター)をプロジェクト代表とする Tibetan-Sanskrit 構文対照電子辞書プロジェクト(eDic) http://www.info.ioc.u-tokyo.ac.jp/suzuki/edic/ の活動はまた、今後の新しい研究方法を示唆するもので興味深い。試験公開されているものをると『法華経』利用した構文レヴェルでの対照電子辞書であるが、目指すものは、「散逸した大乗経典のサンスクリット原典をチベット訳経典をもとに構文レベルで復元することにあるという(11) プロジェクトが進行、研究可能性進展することをから希望するが、復元された梵本研究レヴェルかられてちすることもあるだろう。法然上人『一枚起請文』還梵(梵作?)をした研究者ていたが、我々はこのようなみがどのようながあるのかを十分検討しなくてはならない

註記

(補註a) 台湾の蕭鎮国氏が独力で入力された大正新修大蔵経のCD-ROM (Big-5)が存在する。大藏出版との版権関係等詳細らかではない

(1) 漢字のコードとしては以下のものが一般的であるGB コードGB 2312-80)「国家標準信息情報交換用漢字編碼字符集」(1981制定された、漢字6,7637,445文字のセットで、中華人民共和国中心とする地域使われている。)KSコードKS C 5601-1992)(韓国文字セットの漢字場合にはこのコードを使KSC   にはハングル2,350字、漢字4,888など8,224文字まれる。)Big5コード 1984台湾情報産業研究所制定したもの。漢字13,05313,523文字のセットである。仏典使われることはBig5よりないが台湾経済部中央標準局公布した文字セット規格CNSCNS 11643-1992もある

(2) 加藤弘一「電子テキストの――大蔵経テキストデータベース研究会石井公成氏&師茂樹氏」 http://www.horagai.com/www/moji/int/sat.htm  ; ウルスアップ「「高麗大蔵経入力計画」探訪」 http://www.iijnet.or.jp/iriz/irizhtml/ebti/samsungj.htm ; 高麗大蔵経研究所  http://www.sutra.re.kr/ 

(3) 李鐘徹氏は今年71日午後に東大で行われる日本印度学仏教学会大会のコンピュータ利用シンポジウムで報告をされる予定である。

(4) TITUSThesaurus Indogermanischer   Text- und Sprachmaterialien) (HTML version (UTF-8)」「WordCruncher version」) http://titus.uni-frankfurt.de/ 

(5) sparsabhumi http://www.anu.edu.au/asianstudies/ahcen/coseru/ 

(6) 大正大学綜合佛教研究所  http://www.sobutsu.org/ 

(7) この項目の情報は野中俊介氏による[国際仏教徒協会東京事務所」 http://homepage1.nifty.com/sojusha/newpage2.htm  及び佛教大学の山極伸之氏から得た。

(8) 日蓮聖人のご遺文の一部(「法華経信行妙典」に基づくもの)はまた、『妙法蓮華経』のデータと共に「ロータス」と題するページ http://www.ceres.dti.ne.jp/~kosho/ の中で公開されている http://www.ceres.dti.ne.jp/~kosho/kyo_001.html#top が、学術的な関心に基づくものではない。

(9) ネット文献引用のガイドライン等については「ネット文献の引用方法について――学術資源としてのネットの可能性――」 http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/compass-028.html を参照されたい。

(10) インターネットの学術発表における著作権と優先権及びその他の一般的な問題点について村瀬澄夫村瀬さな子両氏による論考がある「インターネットによる学術発表の著作権と優先権」 http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/rerecord-021.html 

(11) 具体的に何を構文レヴェルでの対照というのかということについては、 http://www.info.ioc.u-tokyo.ac.jp/suzuki/edic/eDic.txt あるいは http://www.vacia.is.tohoku.ac.jp/member/aiba/project/edic/pr/document/20001.ioc/ に実例が示される。チベットからの還梵還漢みはしかしコンピューターを使わずになわれた前例もある。例えば、「Bhavanakrama還梵したBibliotheca   Indo-Tibetica IX(1985)例、あるいは稲葉正就「圓測解深密経疏散逸部分漢文訳」『大谷大学研究年報24号』等

付記 この報告めるにあたってくの情報沢山からきましたネットからられる情報については出来本文註記言及しましたがその他全般って、山極伸之氏、工藤順之氏、兼岩和広氏、清水和広氏他諸氏から御教示をいただきました記して感謝いたします。

 

 
 

Copyright (C) 2000-2016 All   rights reserved by Shunzo Onoda